れるお姫様とエトランジェ Phase-6.5 その1


Phase-6.5:『雨上がりの翌日』

6.5-1:少しばかり変化した日常。

 素直になるというのは、簡単にも見えるけれど難しいものである。
 ひと目惚れを直感した後で、ひたすら自分の気持ちに一途であり続けられる女の子もいれば、彼女に気に入られた優柔不断な少女の方は、同じく
出逢った時から強く惹かれていたにも関わらず、相手から向けられた実直すぎる想いに戸惑いと反発心を芽生えさせてしまうと、その後は殆ど無意識に拒み続ける一種の「体質」が形成され、いつしか本当の気持ちとは異なるコトに自ら気が付きながらも、受け止める機会をどんどんと遠ざけていく羽目になってしまった。
「…………」

(任せといてよ♪とりあえず、ああやってスキンシップを積み重ねていけば、いつかはみゆちゃんの方から求めてくるだろうなぁって思ってるんだけど)
(……ううっ、負けるもんか)

(うう、痛い……DVだよ〜……)
(……いいから、真面目に食事しなさい、真面目に)

(みゆちゃん可哀想〜っ、私が人工呼吸してあげる〜っっ)
(させるか……っ!!)
(うぐぐ……っ、せっかく私はみゆちゃんの為にと思ってやってるのに……っっ)

(美由利ちゃん……お母さんはお互いが愛し合ってるなら、女の子同士だとか、行為の是非云々についてどうこう言う気はないわ。だけど、責任はきっちりと取りなさいね?)
(みゆちゃん嬉しい……っっ、これで私達は公認の仲なのね……っっ)
(あーもう、いつまでも遊んでるんじゃないっっ)
(むぅ〜っ、みゆちゃんが冷たい……)

「……ええい、おらまり……すぅ……っ」
 そうして、本当は割と最初の方から両想いだったはずなのに、二人の関係は一方的な鬼ごっこを続ける間柄となってしまい、挙句の果てには、本来は起こり得ないはずだった不幸な結末を自ら手繰り寄せる愚行すら犯しかけたりもして……。

(あのね、色々考えたんだけど……クラスが別々になった事だし、ここらでわたし達も……その……一度離れてしまわない?)
(……どうして?いきなりそんな事言われても分からないよ……)
(いつまでも、そういう訳にはいかないでしょ?このままじゃ、きっとお互いにとって良くないから)

「……う〜〜ん……むにゃ……」
 まったく、何とも滑稽で罪深い話である。
 それこそ、本当はただ一度頷いてやるだけで済む話だったのに、意固地を拗らせた後は、まるでそれが悪魔に魂を売ってしまうかの様な所業にも
感じさせられたりしていたのだから。
「…………」
 だけど……。

(……いいわ。わたしの側が柚奈の居場所なら、好きなだけ居ていいよ。もう、何も言わないから)
(やっぱりわたしも、柚奈がいないと落ち着かないみたい。側にいても離れても柚奈の事を考えてしまって何も手につかないなら、まだ今まで通りの方が
遙かにマシってもんだし)
(これでいいのかどうかってのは、きっと誰にも分からないけど……。それでも、もしこの先で後悔する事があっても、わたしはちゃんと側にいるから)
(みゆちゃん……。ぐすっ、いいんだよね?わたし、また前みたいにみゆちゃんの側に居続けて……)
(あはは、まぁ少しくらいは自重してくれたらありがたい……って、うわわっ?!)

「……すう……っ、ゆい……な……」
 だけど、それ故に今は……。
「…………」
「…………」
「……んお……?」
 やがて、それから意識が一度暗転して再び我に帰った後、わたしはベッドの上へ横たわっている事に気付く。
「…………」
(……ん〜〜。夢、か……)
 そして、少しの間を置いて頭を整理すると、額に少しだけ滲んだ寝汗を腕で拭いながら、言葉には出さずに呟くわたし。
 最近、何だか柚奈が出てくる夢をよく見る様になった気がするけど、それだけ無自覚に意識し続けているのだろうか?
 ……まぁ、それは今も一年前も大差無い気はするけどさ。
「ふわ、ぁ……。まぁいっか……」
 何はともあれ、今朝はいつもより清々しい目覚めを迎えた気がする。
 そこでわたしは首だけを動かして壁に掛けられた時計の時刻の方へ目をやると、頭上近くにある目覚ましが起床を促す時間までは、まだ十分ちょっと
残されていた。
(う〜〜っ。まだちょっと眠いから、勿体無い気もするけど……)
 二度寝をするには中途半端すぎて、何となく睡眠時間を損した気分にはなるものの、それでもけたたましい電子音で強引に呼び覚まされるよりは、
遥かに爽やかな目覚めとは言えた。
(でもまぁ……。少なくとも、健康的ではあるかな……?)
 一応、最近は受験生らしくゲームで夜更かしは自重してるからというのもあるだろうし、何よりもうすぐ七月を迎えようとしている暖かい気候が、柔らかな目覚めに一役買っているのかもしれない。
(あ〜でも、ちょっとベタついてるからシャワー浴びたいかも……)
 その代わり、増えた寝汗はちょっと気持ち悪いこともあるけど、それでも布団から出るのがつらくて仕方が無い真冬と比べれば、今の季節は断然に朝が楽だった。
「…………」
「…………」
(……というか……)
 それから、しばらく間を空けた後に小さくため息を吐いて薄い毛布をめくり上げてみると、中では下着姿の見知った(外見だけは)大和撫子風の美少女が、わたしの背中からお腹の辺りへと両手を絡み付かせながら、小さな寝息を立てていた。
「……うう〜ん、むにゃ……」
「…………」
(これじゃ、汗も余計にかくワケよね……。もう……)
 どうやら、また今日もわたしが寝ている間に迎えに来ては、勝手に潜り込んできたらしい。
 ……というか、肌寒い季節は終わったから、かなり暑苦しいんですけど。
「……すぅ、すぅ……っ」
 それにしても……。
(まったく、これじゃ何の為に早くから迎えに来てるんだか)
 こうやってわたしのベッドに潜り込んで二度寝なんてしていたら、わざわざ起こしに来てる意味がまるでなくて、夜這いならぬ朝這いをしにきてるだけじゃないの?というか……。
「…………」
(……ま、いいか……)
 ほんの一月くらい前までなら、ここで軽く叫び声でもあげながら反射的に飛び起きて、ヘンタイお嬢様の引き剥がしにかかっていた所だけど、今はもう
その必要も無い。
 ……それどころか、まだもう少しだけ寝かせておいてやろうかとか、柔らかくていい匂いのする、ロングストレートの綺麗な黒髪を撫でてやろうかとか
思ったり……。
「うへへへ……みゆちゃん……」
「……はいはい……」
 ちょっと暑苦しい位にしがみ付かれていても、パジャマ越しで伝わる柚奈の体温が心地よく感じられて、無駄な抵抗感からは開放された今は逆に
愛おしさを感じてしまったりして……。
「……んふふぅ〜〜……っ」
 なので、そのままもぞもぞと撫で回してきたり、ドサクサ紛れにお尻や胸にタッチしてきても、少しくらいなら許しちゃう。
(なにせ、散々お預け状態のまま悶々とさせちゃったしね……)
 それこそ、丸一年も。
 ……本当は、そこまで意固地になる必要は無かったかもしれないのに。
(ん……っ、ちょっと……くすぐったいけど……)
 だから、これからその分を取り戻させてやってもいいかな?とは思うものの……。
「…………」
「…………」
「…………っ?!」
「ちょ、こらあ……っっ!」
 ……しかし、そこからやがて、柚奈の手がそれぞれパジャマの中へと潜り込んできた所で、わたしは飛び起きながら全力で跳ね除けた。
「ああんっ。……もう、せっかくいいトコロだったのにぃ……」
「おだまり。まったく、すぐ調子に乗るんだから……」
 そして、がんじがらめになった毛布から抜け出た後で、その端整な顔を不満げに歪めるお嬢様へ、腕組みしながらため息を吐くわたし。
 多少のセクハラは黙認するとしても、もう少し加減というものをですね。
「だって、みゆちゃんが目を覚ました後でも全然抵抗しないから、誘ってるのかなと思って♪」
「……あのね。平日の朝っぱらっから、誰かさんじゃあるまいし」
 相変わらず、はた迷惑な方向に前向き思考なんだから。
 ……ついでに、やっぱり途中からタヌキ寝入りに入っていたみたいだし、いつもの事ながら油断も隙もあったもんじゃなかった。
「んふふ〜。でも最近はそんなに抵抗しなくなったよね〜?今までなら、私のほっぺにみゆちゃんの手形が付く程度は覚悟しなきゃならなかったのに」
「……そりゃまぁ、せっかく早いうちから迎えに来てるんだし、ちょっと位なら許してあげない事もないかなとは思い始めてはいないコトもないけど……」
 というか、平手打ち上等で悪戯してきていたというのも、考えたらタチが悪い話である。
 ……もっとも、このヘンタイお嬢様の場合、それすら楽しんでいたのかもしれないけど。
「うんうん♪」
「だ、だからって、いきなりパンツの中へ手を入れたりして……」
 しかし、そこで最後まで言葉が続かず、顔に熱を帯びさせながら口ごもってしまうわたし。
「ほほう、手を入れたりして?」
 すると、そんなわたしに対して、柚奈の奴はニヤニヤとイヤらしい目を向けながら追求してくる。
「て、手を入れて、その……ま、まさぐってこようとするのは……」
「え〜?どこをまさぐるのか、はっきり言ってくれなきゃ分からないよ〜?」
「…………っ!」

 がいんっ

「あいたたたた……。みゆちゃんの乱暴もの〜っ」
 そして、とうとう堪忍袋の緒が切れたわたしは、いつものゲンコツ制裁を食らわせると、黒曜色の瞳を涙目にさせて頭を押さえながら、自分のコトは棚に上げてお決まりの文句を返してくる柚奈。
 このお姫様と出逢ってから、もう幾度となく繰り返してきたやりとりだけど、鬼ごっこが終わった今でもやっぱり完全に止んでしまうコトは無さそうだった。
 ……まぁ、それはともあれとして。
「おだまり。……まったく、結局今日も爽やかな目覚めとはいかなかったわね……」
 目覚めのちゅーくらいは許してあげるから、たまには静かに起こして欲しいものだけど。


ピピピ
ピピピピピ

 それから、わたしのぼやきに呼応する様にして、止め忘れていた目覚まし時計から耳障りなアラームが鳴り響いてくる。
(やれやれ、いつもより少し早起きしても、結局は無駄な体力を使っただけ、か……)
 まぁ、それでもここで目を覚ますよりは多少なりとも時間的余裕はあるんだけど。
「んじゃ、シャワーでも浴びればさっぱりするんじゃないかな?今からなら、まだ出かける時間にも間に合うだろうし」
「……そうねぇ。んじゃ、お言葉に甘えてそうしますか」
 このお騒がせお嬢様のお蔭で、すっかりと汗もかいちゃってるし。
 わたしは特に悩む事無く頷くと、クローゼットを開けて着替えを見繕い始めていく。
「うんっ♪……あ、下着も替えるなら私が選んでいい?」
「ええい、余計なお世話だっての……っ」
 これからデートに行くわけでもあるまいに……まったく。

6.5-2:当然のコトとして。

 正しい入浴のあり方として、夜風呂は温めのお湯にゆったりと長時間浸かり、朝風呂の方は熱いシャワーをさっと浴びるのが良いらしい。
 そうすれば夜間は身体が温まって安眠を促進し、朝はさっぱりと目が覚める効果があるんだそうで。
(……まぁ確かに、こうしていると眠気も綺麗に覚めて、気分も爽やかにはなるんだけど……)
 しかしその代償として、いつもより少しばかり早起きしなくてはならない為に、今までは知識の中だけで、実際に試したコトは殆ど無かったりして。
 ……だって、わたしみたいな夜更かし好きの寝ぼすけは、朝っぱらからシャワーを浴びる時間を割く位なら、ギリギリまで寝こけていた方が幸せなのだから。
「でも、今はいつまでも寝ぼけ眼でいられないのがつらい所よねぇ……」
「うんうん、1時間目までにお目々をぱっちりとさせとかないと♪んふっ」
「ああ、そういえばいきなり小テストだっけ……」
 ついでに今週の土曜は模試だし、そうこうしているうちに期末試験も近づいてきてるしで、何だか朝っぱらからアンニュイな気分になりそうだった。
「…………」
 だからこそ、こうやって出かける前にシャワーでも浴びて気持ちをしゃんとさせるってのは、受験生にとっては大切な事なのかもしれないけど……。
「……んで、なんで当たり前の様にあんたもいるのよ?」
 そして、シャワーを浴びながらの心の呟きにひと区切りつけた後で、背中ごしにぺったりと身体を密着させてきている柚奈へ向けて、ようやくツッコミを
入れてやるわたし。
 せっかくの爽やかさが台無しとまでは言わないけど、朝食に軽めのおかゆを頼んだら、予想に反してカツ丼が出てきた時の様な気分だった。
 ……ちょっと意味不明か。
「だって、みゆちゃんがシャワーを浴びると聞いて、黙って待っている道理なんて無いじゃない?」
「道理て……」
 そこまで言い切りますか、このヘンタイお嬢様は。
「それに、みゆちゃんも入ってきちゃダメって言わなかったから、もしかして誘ってるかのかなって♪」
「……よく言うわよ。時間差で乱入してきて白々しいんだから」
 当然、こちらとしては一人でさっと入ってくるつもりで、柚奈はわたしが何も言わなくてもリビングで待っててくれると思い込んでたんですけどね。
 ……しかし、最初は一人で脱衣所へ入って服を脱ぎ捨て、風呂場へ移動してシャワーの蛇口を捻った直後の絶妙のタイミングで美少女の皮を被った
オオカミさんが乱入してきたものだから、もう逃げようがなかった。
「だって、みゆちゃんのお家の脱衣所って、一人ずつ入る様になってるじゃない?」
「狭い家で悪かったわ〜ね……。というか、そういうのは方便って言うんだけど、知ってた?」
「さぁ?仏教用語はあんまり興味ないし。……そんなコトより、そろそろ背中を流してあ・げ・る♪」
 ともあれ、それから柚奈はわたしの呆れツッコミをあっさりとスルーしてしまうと、脇の下から伸ばしてきた両手で備え付けのスポンジを手に取り、
ボディーソープが入った容器のポンプを押し上げて、ひねり出した粘液を手早く馴染ませていく。
「あっ、べ、別にそこまではいいってば……っ」
 眠気覚ましが目的なだけだし、お湯だけでさっと洗い流して出るつもりだったのに。
「え〜?でも、汗の匂いってお湯だけじゃ消えないものだよ?んふふっ♪」
 しかし、柚奈はわたしの言葉をあっさりと一刀両断してしまうと、楽しそうに泡まみれのスポンジをうなじから背中全体へ円を描く様に優しく流してくる。
「もう……。そんなに匂うものかな?ん……っ」
 力加減に気を使ってくれてるのは分かるけど、やっぱりくすぐったいし。
「一応、平均でコップ一杯分くらいは発汗するって言われてるからね〜。それに、案外自分の匂いは自分で気付きにくいのもだよ?」
「……う〜ん……言われてみれば……」
 そんな、もっともらしい根拠を言われたら、しっかり洗っておいた方がいい気もしてきた……かも。
「まぁ、私はみゆちゃんの汗の匂いも好きだけど♪」
「あのね……」
 ……やっぱり、どこまで間に受けていいものやら。
(というか、確かに背中だけを流してくれるなら、悪い心地じゃないんだけどね……)
 勿論、髪と同じで触られるのが嫌な相手じゃなければ、って条件は付くけれど、今のわたしと柚奈の間柄なら尚更である。
「ほらほら、特にこういう風通しが悪そうなトコロは念入りに綺麗にしておかなくちゃ?」
 ……なんて思うのも束の間、やがて背中全体を流し終えた後で、今度は柚奈の手がお腹から脇の下へと伸びてきた。
「あっ、こら、そっちはくすぐった……ひっ」
「だぁ〜め。脇とかは寝汗が溜まりやすいんだから、綺麗にしておかないと♪」
「んっ、確かにそうかもしれないけど……っっ」
 でも、こういったデリケートな場所は出来れば自分で洗い流したいんですけどね。
 ……くすぐったいだけじゃなくて、何だかちょっとヘンな気分になってきてしまいそうだし。
「大丈夫、だいじょーぶ。悪い様にはしないから♪」
「…………っ」
(ホントに、大丈夫なんでしょーね?)
 ついでに言えば、ヘンタイお嬢様の甘言とは裏腹に、わたしの第六感の方はそろそろ警鐘を鳴らしてきているワケで。
 大体、「背中を流す」って言い回し自体が、柚奈にとってはただの口実なんだろうし……。

 ついっ

「あひ……っ?!」
 なんて考えた矢先、柚奈の開いていた手のヌルヌルとした指先で、もう片方の脇の付け根を直接触れられ、不意打ちの強い刺激に背中をびくんと
反らさせられてしまうわたし。
「こ、こらっ、時間はあまり無いんだから、あまりヘンなコトはしないの……っ」
「んふっ、別にヘンなコトじゃないよ〜?私はただ洗ってあげてるだけなんだから」
 わたしは身をよじらせながら止めさせようとするものの、柚奈はまたも方便で受け流してしまうと、やがて脇をくすぐっていた左手とスポンジを持つ右手の両方を胸の方へと移動させていく。
「ちょっ、今ヘンなコトはしないって……!」
 そこで、いよいよ本性を現したかと、痛いくらいに強く高鳴った胸の鼓動を抑えて、本気で振り払いにかかろうとするわたし。
「でも、胸だって汗がすごく溜まりやすいんだよ〜?みゆちゃんの可愛いらしいおっぱいでも、油断は禁物なんだから」
 ……しかし、柚奈はまたも反論の余地の無い言葉で返り討ちにしてしまい、スポンジと指先でそれぞれ鎖骨の辺りを指でなぞってくる。
「あ、う……っ」
 確かに知識としては正しいし、でもわたしのちっぱいにはそんな必要は無いからと断言してしまうのも哀しいしで、結局は黙って身を任せるしかなくなってしまう。
(……というか、もうちょっと位は膨らんでもいい気はするんだけどね)
 このヘンタイお姫様と出逢ってから、何だかんだと揉まれ続けてきてるというのに、残念ながらそっちはどうやら迷信らしい。
 ……ほら、今でも柚奈の手つきが次第に下乳だけじゃなくて、胸全体へと及んできてるし。
「だ、だからって、こっちの手は余計でしょ……っ」
「ゆっくりしてる時間はあまりないって言ったのはみゆちゃんじゃない。だったら尚更、両手を使って効率よく洗ってあげないとね〜?ぐふふ……」
「……う〜〜……っ」
 ああ言えばこういうというか、もう随分とこういう問答は繰り返してるのに、一度も柚奈に勝てたことが無いのが悔しいところだった。
 まったく、頭のいいヘンタイほど厄介なものはないというか……。
「んふっ、みゆちゃんの心臓、ドキドキ脈うってる……」
「もう、誰のせいだと思ってんのよ……んっ」
 たまには、びしっと撃退してやりたいというか、このままズルズルと調子に乗らせていると……。

 さわっ

「んぁ……っっ?!」
 ……予感的中。
 やがて、しばらく焦らす様に胸の周囲を這い回っていた柚奈の繊細な指先が、とうとう一番敏感な部分へと伸びてきて、わたしの身体に突き抜ける様な
刺激が走っていく。
「あは、すっかり固くなってる。……みゆちゃんも、そろそろ我慢の限界だった?」
 そして、びくんと身体を震わせるわたしの反応を楽しみながら、ソフトタッチでグリグリと弄りつつ耳元で意地悪そうに囁いてくるヘンタイお嬢様。
「……し、しらない……あんっ!」
 一応、素直に洗うだけで終わるワケなんてないとは思ってたけど、いよいよ本性を現してきた様だった。
「うふふふふ、クチでは強がりを言ってもカラダは正直だね〜?かわいい……」
「も、もう……っ、結局、こうなっちゃうんだから……ぁ……っ」
 だから、時間も無いから一人でさっさと浴びてきたかったのに……。
「……残念だけど、もうそこはツッコミ所じゃないんだよ、みゆちゃん?本当はこういうコトされるのが好きなのも知ってるんだから♪」
 しかし、柚奈の方は全くお構い無しにそう告げると、今度はスポンジを持つもう片方の指の方も伸ばして、左右同時にくすぐる様な手つきで転がしてくる。
「あひっ?!やっ、それ、だめ……ぇっ」
 実際は軽く触れられてる程度のハズなのに、柔らかくもぬるぬるした指先の感触と、敏感なツボを知り尽くしているかの様な(多分、実際に知ってるんだろうけど)柚奈の絶妙な指遣いに、わたしの身体は為す術も無く痙攣させられ続けていく。
「んふふ〜♪みゆちゃんって指で弄られる時って、こうやって後ろからクリクリされる方がいい反応を見せてくれるんだよね〜。ほらほら、こうすると……」
「か、勝手なコト……あひっ?!」
 そして、今度はその固くなってきた部分へ柚奈の指が押し込まれると、電気が走った様な強い刺激が走って、わたしの言葉が止められてしまう。
「んん〜?知覚神経の方は正直みたいだけど、まだ強がっちゃう?」
「はぁ、はぁ……っ、もう、柚奈のばか……あんっ」
 ……で、結局はこんな捨て台詞を吐くしか無くなるのが情けない話ではあったりして。
「うふふ、みゆちゃんが可愛いすぎるから悪いんだよ〜。……だって、最初はちょっとだけのつもりだったのに、手が止まらなくなっちゃうもん」
「そ、それは、ただあんたがヘンタイだから……」
「……ってコトで、そろそろこっちも洗ってあげるね?」
 それから、柚奈はわたしに一方的にそう告げると、左の胸を弄る手をそのままに、スポンジを持った右手の矛先が、お尻の表面をイヤらしい手つきで
撫で回してくる。
「こ、こら……っ、そこは……っ」
 胸とはまた違う、ゾクゾクとするくすぐったい感覚と共に、これから柚奈の右手が向かう矛先を予感して、また動悸を一段と昂ぶらせられてしまうわたし。
「”ここ”も汗が溜まりやすい場所でしょ?ちゃんと綺麗にしておかないと、かぶれちゃうかもしれないし」
「で、でも……」
「大丈夫♪谷間の先はちゃんと指で優しく洗ってあげるから。んふっ♪」
 そして、柚奈は戸惑うわたしに構わずそう告げると、スポンジを近くの棚へ置いた後で、お尻の谷間の隙間へと繊細な指先を潜り込ませてくる。
「ぜ、ぜんぜん大丈夫じゃ……んひっ?!」
 それからやがて、柚奈の指先がその奥にある、わたしの身体で最も敏感な部分の一つである窪みに触れられ、再び背筋に粟立つ様なゾクゾクっとした刺激が走っていった。
「や……っ、はぁぁ……んあ……っ」
「んふふふ、相変わらずお尻が弱いんだから……。これじゃ、弄るなって言われる方が無理だよね〜?」 
「そ、そこは……。ホントに自分でするってば……っ」
 未だに凄く恥ずかしい上に、そんな執拗にグリグリと弄り回されたら……。
「だぁめ。私の為にも、ちゃんと念入りに綺麗にしておかないと」
「ああん、もう、イミが分かんな……あひっ、はぁぁぁぁ……っ」
 やがて、胸の先とお尻を同時に弄られ始めると、腰から力が抜けていく様な刺激に理性が飛んでしまいそうな心地になってしまうわたし。
「んあっ、はぁ、はぁ……っ、ゆいな……そこ……らめぇ……っ」
 ホントに腰が抜けてしまいそう……っ。
「おっとっと……。もう、ちゃんと足に力入れてないと危ないよ〜?」
 そして、足がガクガクと震え始めた所で、柚奈が慌てて自分の胸元へ引寄せる様にして、わたしの姿勢を固定させてくる。
「もう……。あんたのせいでしょーが、このハレンチ娘……っ」
「ごめんごめん、みゆちゃんの感度が良すぎて加減が難しいんだよ〜。んふっ♪」
「……ばかぁ……っ」
「んじゃ、のぼせてしまわないうちに、こっちも済ませちゃうね?」
 それから、柚奈は耳元で囁きかけると、右手を一旦流した後で改めてスポンジから泡を馴染ませると、今度は指先を下腹部の方へと移動させていく。
「あう……っ、そ、そっちもするの……?」
「だってみゆちゃん、お風呂の前にトイレ行ってたでしょ?……んふふ、相変わらずのつるつるですべすべ〜♪」
 一応、流れからして予感はしてたものの、やっぱり戸惑いを隠せないわたしに、柚奈は入り口の辺りを指先でなぞりながら囁きかけてくる。
(…………っ)
 柚奈の口調は完全にアブないお姉さんのそれではあるんだけど、でも悔しい事に今はそれがわたしの心を昂ぶらせていたりもして……。
「あう……っ、で、でも……。これ以上はもう時間が……っ」
「大丈夫、手早く済ませちゃうから♪」
 そして、時間を気にするわたしに構わず、愛しのヘンタイお嬢様は一方的にそう告げると、馴染ませた指先を割れ目の中へと埋没させて、小刻みな動きで内部を弄り始めてくる。
 ……既に、背中を流すなんて名目は、食玩のラムネ程にも存在感が無くなっていたりして。
「んあ……っ!く……っ、ちょ……ああんっ!」
「ほらほら、あまり大きな声をあげると、お母様に聞かれちゃうかもよ?」
「だったら、少しは遠慮しなさいよぉ……っ」
 いきなり激しすぎというか、繊細で滑らかに蠢く柚奈の指使いは、回数を重ねるごとに心得てきたらしいわたしのツボを的確に突いてきて、否が応でも
呼吸を荒くして喘がされてしまうわたし。
 それはまるで、柚奈の指でわたしという楽器が奏でさせられている様に。
「はぁ、はぁ、ふぁぁ……っ」
 ……何だか、天才的なピアノの才能の無駄遣いって感じもするけど、あのヘンタイお嬢様の事だからこれはこれで本望なんだろう。
「むふふ〜。みゆちゃんがえっちなせいだから、もうどうにもなりませーん♪」
「あ、あんたにだけは言われたくないわよ、この……あひっ!」
「私は自覚あるもーん。みゆちゃんとえっちするコトばかり考えてるヘンタイさんだし♪」
「く……んっ、開き直ってんじゃないわよ……っ」
 しかも、このコはわたしからヘンタイ呼ばわりされればされるほど興奮してエスカレートしてくる、正真正銘の真性さんでもあったりして。
「あはは、何か問題でも〜?……とか言ってみたりして」
「……う〜っ、近頃は随分と強気じゃないのよ……」
「んふふ、みゆちゃんの”おかげさま”で、ね……?」
「…………っ」
 確かに、以前だったら手段を問わず全力で逃げ出そうとしたのに、今はそんな間柄でも無くなっちゃったからではあるんだけど。
「せっかく、みゆちゃんが受け入れてくれたんだから、遠慮する方が逆に失礼かな……って」
「んっ、元々、遠慮なんてしてなかったでしょーが……」
 最後は一応わたしの自爆もあったけど、出逢った日から攻めて攻めて攻められ続けて、そしてとうとう陥落させられたのだから。
「まぁまぁ、それは言いっこナシで♪」
「はひ……っ!や、やぁ……っ、はぁぁ……っっ」
 やがて、柚奈の指先の動きが秘唇の付け根にある一番敏感な部分を狙って蠢く様になり、蕩ける様な快感と共に、再び膝がガクガクと震えていく。
「んあっ、はぁ、はぁ……っ、ゆいな……らめぇ……っ」
(あうっ、このまま……もうすぐ……)
 ”手早く”という言葉通り、胸と同時に容赦なく秘所の敏感な部分を攻めたて続ける柚奈の指遣いに、わたしは絶頂が近付いてきているのを予感させられてしまう。
「……んっ、あっ、はぁぁぁ……っ」
(でも……)
 このままイカされてしまうのも、何だか不満が残る様な……。
「……あ、そうだ。ちょっとこっちを向いてくれる、みゆちゃん?」
 するとそんな時、不意に何かを思出した様な声で促してくる柚奈。
「え……?」
 そこで、わたしは釣られるがままに振り向かされて……。
「すっかりと後回しになっちゃったけど、おはようのキス♪」
「…………っ?!」
 にっこりと天使の様な笑を見せた次の瞬間、わたしの唇は柚奈の柔らかい唇で塞がれてしまった。
(あ、これだ……)
 そして、何だか癪に障るくらいの安心感と、ようやく物足りなかったモノを得られた心地よさに、自ら進んで柚奈の唇を更に求めてしまうわたし。
 ……忘れかけてたけど、今朝はまだずっとお預け状態だったっけ。
「んん……っ、んはぁ……っ」
 それから、どうやら柚奈はこのままわたしを絶頂まで誘う気らしく、重ねた唇の中でねちっこく舌を絡ませながら、愛撫の指を更に激しく掻き回して
ラストスパートをかけていき……。
「はぁ、ふはぁ……っ」
「みゆふぁん……みゆ……」
「ゆふぃ……はぁぁ……っ」
(も、もう……だめ……ぇっ)
 でも……。わたしもこのまま……。
「んううううう……っっ?!」
 ……そうして、わたしは望み通りに、柚奈の腕の中で頭の中を真っ白にさせながら上りつめてしまった。

「はぁ、はぁ……はぁ〜〜っ……」
「んふふ、みゆちゃん目は覚めた〜?」
 やがて、ようやく愛撫の手から解放された後でぐったりと項垂れるわたしに対して、お互いの身体に残った泡をシャワーで落としながら上機嫌で尋ねて
くる柚奈。
「……う〜っ。あんたの所為で無駄に疲れて、また眠くなってきそうなんだけど……」
 せっかく、気分をすっきりさせる為にシャワーを浴びに来たのに、これじゃ本末転倒もいい所である。
「ん〜っ……。小テストさえ無いなら、ここでみゆちゃんに今日はお休みして、一日中イチャイチャしない?って言えるんだけど……」
「生憎、そんなフリーダムが許される身分でも無いっての……」
 お互い、小テストだけじゃなくて、受験と期末テストも近づいてる身だってのに。
 ……もっとも、危機感を募らせているのはわたしだけだろうけど。
「むう……。でもまぁ、来月には楽しい夏休みに入るし、あとちょっとの辛抱かな?んふっ♪」
「本当に余裕ですなぁ、柚奈お嬢様は……」
 まったくあやかりたいものだけど、生憎わたしと柚奈じゃスペックが違い過ぎである。
「え〜?でも、夏休みになったらずっと一緒にいられるし、遊びに行ける時間は去年より減っても、私にとってはそれだけで嬉しいよ♪」
「……別に、それは今と大して変わらなくない?」
 何だかんだで、結局はまた殆ど毎日の如くこうして迎えに来る様になってるし。
 今は一応、車で送ってきてもらってるみたいで移動時間は大幅に短縮されてるみたいだけど、わたしも芹沢さんも諦めて好きな様にさせていたりして。
「ううん、気分的には全然違うよ〜?それにもし、みゆちゃんの模試や期末テストの成績が悪かったら、夏休み中は私の部屋でずっと特別合宿になりそうだし♪ぐふふ……」
「ええい、それには及ばない様に頑張るわよ……っ」
 いくら豪邸だろうが、籠の中の鳥はゴメンですから。
 ……それに、受験生だろうが完全にゲーマーを休業している状態ではないものの、あいにく柚奈の部屋は大きなTVがある割に部屋の主の意向で
ゲーム禁止だし。
「あはは。……でも、あまり無理はしないでね?まだ先は長いんだから」
 すると、空元気で意気込んでみせるわたしへ、慈しみと心配が混じった目を向けて諭してくる柚奈。
「むしろ、今こそ少し位は無理してみるべき時期じゃないの?」
 担任の先生によると、これから夏休みにかけての時期がいわゆる天王山らしいし、特にわたしの場合は、今までサボってきたツケが溜まりに溜まってるワケで。
「学習するのに大事なのは量じゃなくて質だって、栞ちゃんと二人で教えなかったっけ?」
「そうは言われてもねぇ……」
 出来る人の言葉は、出来ない人には届かない事も多々あるものであって。
「……まぁ、みゆちゃんとのえっちに関しては、量も重視したいけど。んふっ♪」
「もう……。自分でこんなコトを言うのもなんだけど、飽きないのね」
 それから再びヘンタイお嬢様に戻って、ぽっと頬を染めながら穏やかならぬ言葉を続けてくる柚奈に、わたしは呆れと苦笑い交じりでツッコミを入れる。
 初めて柚奈と肌を重ねてからまだ一月も経っていないけど、既に回数を振り返るのは放棄してしまったぐらいに繰り返してきてるというのに。
「誰かが言ってなかったっけ。愛する人はおにぎりの様なものだって」
「つまり、日本人がご飯を毎日食べるのは自然だってこと?」
 新婚の夫婦が、愛の営みを毎晩の様に行うのも然りで。
「ん〜〜。ちょっと違うかな?」
 しかし、そこで柚奈は視線をちょっと中空へ外して訂正してきた。
「あにがよ……?」
「私的には”毎日”じゃなくて、”毎食”でもOKだよって意味で♪」
「……まったく、ホントに底なしなんだから……」
 飽きられちゃう心配が無いのはいいけど、逆にわたしの身体がもつのかしらん。
「…………」
 ついでに、毎食でもというコトはつまり、下手したらまたお昼くらいにでも……?

6.5-3:それこそ、欲望の赴くままに。

「……う〜〜っ、やっぱりこうなってるし……」
 それから、お昼ご飯もそこそこに済ませたお昼休み、柚奈に手を引かれて連れ込まれた特別教室校舎の教員用トイレの個室の中で、ブラウスのボタンを外されながらぽつりと呟くわたし。
 まずは糸を引く程の濃厚なキスを交わした後で、トイレに座らせられて脱がされてと、すっかりといつもの流れだった。
「ん、何が〜?」
「何となく、朝のシャワーの時に、あれで終わらせる気は無いんだろうな〜って思ってたから……」
 というか、隅々まで念入りに洗っていたのは、この為でもあったのかなって。
「あは。世の中の因果ってのは連鎖するものだよ〜、みゆちゃん?」
 すると、すっかり発情中のヘンタイお嬢様は、脱がせる合間にわたしの手首へ口付けして欲望の意思表示を見せながら、曖昧な言葉で肯定してくる。
「……つまり、わたしを弄り倒してた感触を授業中に思い出していくうちに、ムラムラきちゃったと?」
「んふっ、さすがはみゆちゃん。話が早いんだから♪」
「いや、そーいうコトで褒められてもね……あうっ」
「だって、シャワーの時はゆっくりしてる時間が無かったから、じっくりと味わえなかったし」 
 そう言って、今度は露になったブラをたくし上げ、軽く指先で先端を弄りながらわたしの首筋へ唇を触れさせてくる柚奈。
「ん、あ……っ、ちょっ、キスマークは付けないでよ……っ?」
 今はもう、マフラーとかで誤魔化せない季節なんだから。
「え〜。いいじゃない?午後から着替えることはないでしょ?」
「そういう問題じゃなくて……。見つかったら職員室呼び出しじゃ済まないかも……あんっ」
 確かに、わたしと柚奈の関係はクラスメートにはバレバレだし、校則で禁止されている不純異性交遊にはならないのかもしれないけど、誰にも言えない秘めゴトをしているのは自覚して欲しい所であって。
「大丈夫。……もしもの時は、私がちゃ〜んとお話をつけるから。うふふふふ……」
 しかし、柚奈の方は全く意に介さない様子で妖しく微笑むと、跡が付かない程度の加減で首筋へ吸い付いた後で、ゆっくりと胸元へ向けて舌先を降ろしていく。
「もう、柚奈が言うと、何か物騒なんだけど……んあ……っ!」
 それからやがて、湿り気を帯びた柔らかい舌先が敏感な胸の先端へと到達すると、文字通りに味わう様なねっとりとした動きで這い回ってくる。
「ひ……あ……っ、んく……っ」
 その突き抜けるような快感に、身体を震わせながら思わず家でしている時の様な声が出そうになった所で、慌てて唇をかみ締めて抑えるわたし。
「は、あ……はぁぁ……っ」
(うあ……っ、やっぱり舌の方が気持ちいい……かも……)
 時折小さな音をたてながら、柚奈の舌が生き物の様に押し込んだり這い回ったり、時折吸い付いたりと、優しくも執拗に舐め回す光景がまた余計に
精神的な昂ぶりを与えてきて、わたしの身体はあっという間に力が抜けて為す術も無くなってしまう。
「とにかく、何があってもみゆちゃんは私が守るから。……んふっ、コリコリしておいし……」
「あひ……っ、ゆ、柚奈……ぁ……っ」
 それから、物騒でも心に響く口説き文句と共に、柚奈の生暖かい唇できゅっと固くなった先端を挟まれ、びくんっと大きく肩を震わせるわたし。
 ……ただ、守ってくれるのはいいけど、その代わりに最近の柚奈はもう、ムラムラきたら所構わずって感じだった。
「でも、左右のおっぱいで結構舌触りが違うんだよね〜。それに、感度の方も……」
「んんあ……っ」
 そして、休む間もなく柚奈の舌先が今度はもう片方の胸の先へと向かうと、同じ様に口に含みながら丹念に嘗め回してくる。
「はぁ、はぁ、ふぁ……っ」
「あはっ♪……だけど、どっちの方が感じる?って質問には答えられないんだよね〜」
「……う〜〜っ……」
「まぁ、私としても満遍なく可愛がっちゃうから同じコトなんだけど。うふふふ……」
「やあん……っ、もう……っ」
 しかも、最初はひと目を避けてちゅーする程度だったのに、こんな感じでどんどんとエスカレートさせてきてるし……。
 ……もっとも、柚奈に言わせれば、1年分の積もりに積もった分には全然足りないらしいけど。
「んふふ、でもみゆちゃんだって、予感してたってコトはちょっと物足りなかったんでしょ?」
「そ、それは……あんっ」
 というか、わたしの場合は物足りないというより……。
「それは〜〜?」
「……っ、し、知らないっ……」
「うふふ〜♪それじゃ、別のお口から直接聞いてみよっかな?」
 ともあれ、本音を口には出せずに顔を背けるわたしへそう告げると、スカートの中へ手を入れてショーツ越しに花弁の入り口を軽くまさぐってくる柚奈。
「やぁ……っ」
「……あはっ、ショーツの上からでも分かる位に湿ってるよ、みゆちゃん?」
「う……っ。あ、あんたのせいでしょーが……っ」
 ただでさえ弱いのに、あんなにねちっこく胸とか舐りまわすから……。
「うんうん。こうなったら、もう私が最後まで責任をとって綺麗にしてあげるしかないね〜♪」
 すると、わたしの捨て台詞にヘンタイお嬢様は嬉しそうに頷くや否や、スカートを捲り上げて下着を脱がせようとしてくる。
「ちょっ……だめ、やっぱり学校でこんな……」
 そこで、さすがにそこまでは……と、スカートを押さえる手を伸ばして抵抗してみせるものの……。
「……だぁめ。もうみゆちゃんは私のモノなんだから」
「…………っ」
 しかし、その手を柚奈に掴まれた後で殺し文句を向けられ、抵抗もあっさりと萎んでしまうわたし。
(私のモノ、か……)
 少し前までは、即座に否定しつつ問答無用でヘッドロックの一つでもかけてやる位に反発を覚える言葉だったろうに、今は自分でも戸惑うくらいに心地
よく感じてたりして。
「もちろん、その逆も……だけどね?」
「…………」
 ……いや、心地よくなんてレベルじゃなくて、まるで心の媚薬と言った方がいいかもしれない。
「というコトで……。いいよね、みゆちゃん?」
「……うん……」
 そして、改めて促された所でわたしは小さく頷くと、脱がせ易いように少しだけ腰を浮かせる。
「んふ、では遠慮なく♪」

 するする

(……う〜っ、何だろうこの感覚……?)
 柚奈に恥ずかしくてエッチなコトをされてるって意識すればするほど身体の芯から熱くなって、そして敏感になっていく感じ。
 それは、まるでわたしの身体が……。
「…………っ」
「んふふふ、ご開帳〜♪」
 ともあれ、やがて引き下ろされた下着が片足から抜けて、改めて太ももを押し上げられながら、わたしの恥ずかしい部分が柚奈の目の前で露わに
なっていく。
「あう……っ、も、もう……恥ずかしいんだからね……?」
 もう幾度となく柚奈に見られてはいるものの、やっぱり慣れる事はないし、何よりここが学校の中でとなると、恥ずかしさの感覚がまるで違う感じだった。
「……でも、こんなにぬるぬるにして……。やっぱり、みゆちゃんもしっかりと感じてるんだ?」
「あひ……っ!」
 それから、柚奈の指先が入り口へ触れた瞬間、予想以上の刺激に足がつりそうになってしまうわたし。
 ……口に出して認めたくは無いけど、いつもより相当過敏になってるみたいだった。
「んふっ♪このまま、くぱぁ〜とかやってみたりして♪」
 そして、更に調子に乗った柚奈が、わざわざ言葉で宣言しながら両手を添えると、わたしの花弁をゆっくりと左右へ広げていく。
「ああもうっ、このヘンタイぃ……っ」
 一応、こういうコトされるのも始めてじゃないけど、やっぱり場所が場所だけに、心臓が握られる様な心地で頭もクラクラしてきそうだった。
「んふっ、いつ見ても綺麗な桜色……。この可愛らしい花びらが私だけのモノだなんて、なんだか自慢して回りたいくらいだよ〜」
「……あ、あほう……っっ」
 羞恥心で人が殺せるかの実験でもする気ですか、この変質者予備軍のお嬢様は。
「あはは、冗談だよ〜。でも、茜ちゃんくらいになら、いいかな?」
「もう……。そういうのはいいから……っ」
 茜は茜でまた違うというか、ともかくそっち方向に性癖を拡大するのは勘弁である。
「んふふ、そうだね。今はせっかくみゆちゃんがこうして蜜をごちそうしてくれようとしてるんだから……」
 すると、柚奈はあっさりと話を打ち切ってそう告げると、もう我慢出来ないとばかりにわたしの太ももの奥へと顔を埋め、伸ばした舌で花弁を這い回らせてきた。
「あ……はぁ……っ!」
 最初は入り口付近を舐めとる様に、そして次第に柔らかい舌を中へと埋めてむさぼっていく柚奈の躊躇いの無い舌づかいに、ジンジンと痺れるような
快感がわたしの背筋を走っていく。
「んふっ、みゆちゃんのお味……おいひい……」
「はぁ……っ、はぁぁぁ……っ、ゆいなぁ、そんな激しく……っ」
 しかも、ただ舐め回すだけじゃなくて、じゅるじゅるとイヤらしい音を響かせながら吸い付いてきたりもして、激しくも休みの無い刺激に頭の中がどうにかなってしまいそうだった。
「……あは、すくっても、すくっても溢れてくる……」
「うあ……っ、ああ……っ、やあっ、そんなに音たてちゃ……ひぅ……っ」
 また、そのお下品な響きは柚奈の唾液だけじゃなくて、わたしの分泌してるモノの所為でもあるわけで、余計に恥ずかしさを増幅させられてしまう。
「いいじゃない〜。もっと味わわせてよ、みゆちゃん?」
「はぁ、はぁぁ……っ、奥でかき回しちゃ……んぁぁぁっ」
 ……だけど、今はその恥ずかしさすら媚薬となって、わたしの気持ちを更に昂ぶらせていたりして。
「んふっ、奥よりこっちの方がいいのかな……?」
「あひ……っ?!や、らめ……っ、そこは……ぁぁぁっっ」
 それから、柚奈の舌先が一番敏感なクリトリスの方へ伸びると、わたしは再び大きな喘ぎ声を出しかけてしまう。
「ここは、ナニかな?うふふふふ……」
「はひ……っ、ダメ、声が……んっ」
 声だけじゃなくて、本当に頭の中が真っ白になってお馬鹿になっちゃいそうだった。
「はぁ、はぁ……っ、うぁぁ……っっ」
 どっちにしても、このままじゃあっという間に……。
「あっ、はぁぁ……っ、ゆ、柚奈……もう……っ」
 やがて、身体の心からジンジンとする快感が頂点に近づいてきたのを感じたわたしは、柚奈へ控えめに訴えかけるものの……。
「…………」
 しかし、そこで一気にラストスパートをかけてくるかと思えば、何故か逆に舌を止めてしまう柚奈。
「……え……。ど、どうして……?」
 あと、ほんのちょっとだったのに……。
 ……まさか、おねだりでもさせるつもりなんだろうか?
「んふふ、まだ今日のメインディッシュをいただいてないからね〜」
 ともあれ、思ってもいなかったお預けを受けて困惑を隠せないわたしに対して、柚奈は口元がべとべとになった顔を上げると、妖しい笑みを見せてくる。
「ふぇ……?メインディッシュ……?」
「……ね、みゆちゃん。お尻をこっちへ向けてみてくれるかな?」
 そして、絶やさない笑みの中に今度は有無を言わせない意思を込めて、ヘンタイお嬢様はわたしにそう告げた。

「え、えっと……こう……?」
「……うわ、これは凄くえっち……ごく……っ」
 それから、促されるがままに柚奈の目の前へお尻を突き出す形で四つん這いになると、スカートを背中の方へ捲り上げながら、別アングルで露わに
なった恥ずかしい部分に鼻先を密着させてくる柚奈。
「ああもう、ノドを鳴らしてんじゃないわよ、このヘンタイ娘……っ」
 こちとら、間近で凝視されてるだけで足が震えてきてるってのに、くんくんまでしてきてるし……。
「ぐふふ〜、やっぱりこのカッコだと可愛いお尻の穴が丸見え〜♪」
 しかし、このヘンタイお姫様は顔面に熱を帯びさせるわたしに構わず、両手でお尻の肉を押し広げて、その奥にある窪みへ息を吹きかけてくる。
「……っ、……もしかして、メインディッシュって……」
「だって、指先でちょっと弄ってみただけで、あれだけ敏感に反応してくれちゃったら、思いっきり舐め回したくなるよね〜?」
 そして柚奈はそう告げると、そのまま今度はお尻の谷間へ顔を埋めて、窪みの皺をなぞる様に舌を這わせてきた。
「ちょっ……そんなトコ……んひっ?!」
 それから戸惑う間もなく、くすぐったさを最大限まで増幅させた様な刺激がお尻から背筋へと走り、背中をのけぞらされてしまうわたし。
「はぁ、はぁぁ……っ、はひ……っ」
「ん……っ、気持ちいい……?」
「らめ……おかしくなっちゃないそう……んっ」
 気持ちいいも何も、今までと同じく遠慮も躊躇いも全く感じられない柚奈の舌づかいは、強がってみせる余裕すら与えてくれなかったりして。
「うふふ、最後はお尻でイカせてあげるね……。あはっ、何だかドキドキしちゃう……」
「はぁ……っ?!うぁ……っ、らめ、一緒に弄っちゃ……くぅ……っ」
(ちょっ、ダメ……こんなの耐えられない……っ)
 しかも、一点集中で舐め回すのと同時に、柚奈の手はイキかけていた花弁を小刻みな動きで弄ってきてるものだから、わたしの方は腰が崩れてしまわない様にふんばるのが精一杯だった。
「ほらほら、今度はほじっちゃうよ〜?」
「やぁぁ……っ、そ、そんなにしたら……ひ……っ」
 それでも、このヘンタイお嬢様は手を緩める事なく、今度は窪みをえぐる様な舌づかいも交えながら、わたしの敏感すぎる場所を攻め立ててくる。
「はぁ、はぁ……っ、ふぁぁ……っ」 
「んふふ、気持ちいいみたいだね〜。みゆちゃんが望むなら、一日中だってご奉仕しちゃうから♪」
「はぁ……っ、も、もうホントにヘンタイなんだから……っ」
 ……同時に、ちょっとだけ嬉しいのは内緒だけど。
「だって、みゆちゃんがココ弱いのもあるけど、何だか幸せで嬉しいんだもん。本当に好きな人相手だから出来る愛情表現だし」
「ゆいな……。もう……っ、こんな時にそんなコト言わないの……んっ!」
 恥ずかしい様で、ますます感度が上がってしまいそうだし。
(というか……)
「ゆ、柚奈……ぁっ、お願い……わたし、もう……」
 何だか、嬉しさも加わった快感がわたしの背筋を突き抜けていく感じで、このままだと……。
「……うん。今度こそ、このまま最後まで……」
 そこで、限界を感じて懇願するわたしへ柚奈は静かに応えると、それとは対照的な激しい動きで同時に掻き回してくる。
「はぁぁぁ……っ、柚奈……気持ち、いい……んっ」
 あとはこのまま、柚奈の舌と指に身を委ねて……。
「みゆちゃん……みゆちゃん……っ」
「ゆい……ふぁぁぁぁぁ……っっ?!」
 それから、柚奈の舌先が窪みの中へ深くねじ込んできた瞬間、わたしは今度こそ全身を痙攣させながら絶頂を迎えてしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
「んふふふ、ごちそーさま。とっても美味しいデザートだったよ、みゆちゃん?」
 やがて、時間をかけてたっぷりと可愛がられた余韻と疲労で、着衣も整えないままぐったりと呼吸を整えるわたしへ向けて、濡れそぼった指先を妖しく
舐めとって見せながら、満足そうに囁きかけてくる柚奈。
「う〜〜っ……」
 わたしの方は、体力を大幅に消耗してしまった感じで、午後の授業の途中で眠ってしまわないか心配なんですけどね。
 デザートと言うには少々重過ぎるというか、まったく……ホントに欲望の赴くままなんだから。
「……でも、ほんの少し前までなら、私がみゆちゃんをひと気の無い場所へ連れ込もうとするだけで平手打ちの一発や二発は覚悟しなきゃダメだったのに、今じゃ……ぐふふふふふふふ……」
「もう、ニヤニヤと気持ち悪い顔してんじゃないわよ……」
 おそらく幸せの笑みなんだろうけど、今でもやっぱりそんな顔をされたら、ちょっと癪に障ったりもして。
「だって、求めたくなったらいつでも手を伸ばせられるって、なんて幸せで素敵なんだろうって♪」
「…………っ」
 けど……。
「それに、みゆちゃんだって本気で抵抗したりはしなくなったし、もう諦めちゃった?」
「……それは……だって……」
「だって、なぁに……?」
「だって……わたしも、あんたと同じ位に好きになっちゃったんだから、仕方が無いじゃない……」
 もう、わたしの心は柚奈に縛られてしまったのだから、とても以前の様に逃げたり跳ね除けたりなんて出来やしなかった。
 今のわたしは柚奈に求められれば、どんなコトでも受け入れるしかない。
(……ううん……)
 それどこか、もっと柚奈にメチャクチャにされたいって、そんな感情の爆発すら覚える時もあったりして。
 ……ちょうど、今みたいに。
「みゆちゃん……。もう、そんなコト言われちゃったら……」
「んむぅぅ……っ?!」
 すると、最後まで言い終える前に感極まった柚奈から強い力で抱き寄せられ、疲労も忘れて再び猛烈な勢いで口付けを交わすわたし達。
「はぁ、はぁ……っ、愛してる、みゆちゃん……っ」
「んんっ、ゆ、柚奈……ぁっ」
 そして、痛い位に強く抱きしめ合い、互いの唇や舌をむさぼり合いながら、わたしは改めて心が開放されていく心地を覚えていた。

                    *

「……ほほう。一度肌を重ね合って心を許した後は、まるで決壊したかの様に情欲に溺れているのか。受験生というのに、青春してるなお前ら?」
「もう、身も蓋も無いコト言わないで下さいよ……」
 やがて訪れた放課後の時間、わたしは引っ張り込まれた保健室で冴草先生から歯に衣着せぬ言葉を投げかけられ、紅茶の入ったカップを片手に苦笑いを見せていた。
 今日の放課後は、違うクラスのそれぞれの都合で柚奈と別れ別れになり、わたしの方が早く解放されたんで、昇降口で待っていようと移動していた
途中、保健室の前を通りかかった所で冴草先生に呼び止められて、あの鬼ごっこの日の結果報告をする事になったんだけど、何だか赤裸々に聞かれ
すぎて気恥ずかしかったりして。
 まぁそれでも一応、この件は冴草先生も少しだけ巻き込んでしまったんで、いずれ報告とお礼は言うつもりではあったんだけど……。
「事実は事実だろう?現に今日だって、昼休みに特別教室校舎のトイレで随分と”おたのしみ”だったじゃないか」
「ぶ……っ?!」
 しかし、それから程よく冷めたダージリンを口に含んだ所で、いきなり思ってもみなかった指摘を受けて軽く紅茶を噴いてしまうわたし。
「おいおい、うちは一応淑女の学び舎なのだから、紅茶はもっと優雅に飲むものだぞ?」
「んな……っ?!ななな……っ」
 悪いけど、こちらとしては口から心臓が飛び出そうな位に驚かされて、それどころじゃないんですけど。
「何故そのコトを、か?……そりゃあ、教員用のトイレなんだから、教員の誰かが居合わせたって不思議ではなかろうよ。たとえ、確率の低そうな場所を
選んだとしてもだ」
「う、ぐ……っ」
 つまり、今日の昼休みの”最中”にたまたま冴草先生が居合わせてしまったのもあって、わたしが呼び寄せられてしまったワケですか。
「何だかんだで、トイレの中は響くからな。確かにあそこは穴場かもしれないが、逢引きにはあまり趣味のいい場所とは言えないか」
「……いやまぁ、それは……」
 返す言葉がございませんというか、出来れば柚奈にも直接言ってもらえれば有り難いかも。
「でもまぁ、いいんじゃないか?別に女同士なら妊娠する心配も無いしな。……ま、強いて言えば衛生面にだけ気を付けろって所か」
 だけど、そんなわたし達の不健全な営みに対して、冴草先生は別に咎めるわけでも呆れる事もなく、いつもの淡々した態度で言葉を返してくる。
「……そういう、問題なんですか?」
 というか、またもや身も蓋も無さすぎて、わたしとしても素直に頷いていいのやら悪いのやら。
「養護教員としては、そういう問題なんだ。それより、無駄に我慢してフラストレーションを溜める位なら、欲望に従って求め合う方が精神的には健康的かもしれないしな」
 そしてその後で、「勿論、ある程度の節度は保ってだが」と付け加える冴草先生。
「あー、そういう考え方もありますか……」
「元々、我慢ってのは必要が無いならやらない方がいいんだ。これは学習に関しても同じでな。勉強を苦痛と感じているのなら、本来は大した効果など
得られないと言ってもいい」
「それはまた、受験生に酷なコト言いますね?」
「社会に出れば、努力よりも効率が求められるからな。やりたくもない事を渋々と続けた所で、精々忍耐力を養う位にしかならんが……。まぁ、確かに
高校教師のセリフではないか」
「……いやまぁ、心当たりが無くもないですけど」
 要するに、好きなゲームだと何時間でも続けられるのに、勉強に関しては集中力がそれ程長くは持続しないっていう話なんだろうから。
「結局、自分がやりたい事をやるのが一番ってコトだ。必要なのが分かっているのにやりたくない場合は、やりたくなる理由を探せばいい」
「あはは、それに関しては柚奈のお蔭で大分改善されてますけど」
 課題のクリアに対して飴と鞭がしっかりしてるのもあるけど、何よりわたしの成績を少しでも上げる為に自分の時間を犠牲にして苦心してくれている柚奈を見てると、頑張らざるを得ないというか。
「……まったく、お前さんは幸せ者だな。ただ幸せ者すぎて、それを自ら手放そうとした愚行も犯しかけていたが」
「まぁ、お蔭様で、何とかギリギリでフォロー出来ましたし」
 えっと、こういうのを確か諺で……。
「ふっ、結果的には雨降って地固まるをまんま体現してしまったというワケか」
「……ああ、それです多分。もしかしたら、結果オーライだったのかな……とか思ったり」
 正直、わたしが迷走しなきゃしなかったで、おそらく柚奈との関係は何も進展せずに、今でも付かず離れずの鬼ごっこを続けていたかもしれないし。
 まぁ、どっちが幸せだったかの結論は、卒業した時までの宿題としておくけど。
「やれやれ、今度はノロケも飛び出してきたな。……さて、そろそろ砂を吐かされる前に話を切り上げておくか」
 ともあれ、思わず顔が緩んでしまったわたしに冴草先生は肩を竦めてそう告げると、腰掛けていた椅子を回転させて自分の机へと向きを変えていった。
「あ、はい……。お茶、ごちそうさまでした」
 確かに、わたしの方もそろそろ戻らないと柚奈が心配しそうだし。
「……とりあえず、乙女のゲームの勝者へおめでとうの言葉は送っておく。だが、人ってのは不幸すぎても幸せすぎても、良くない方向へ物事を考えて
しまう悪癖があってな」
「……はい……」
「だから、年長者として最後に一つだけお前さんへ助言を送るとすれば、この世の中に永遠なんて存在しないと主張する輩は多いが、あれは基本的に
嘘だと思っていい」
「そうなんですか……?」
「……なぜならな、姫宮。続くはずだった永遠が崩れた原因の大半は、猜疑心に囚われた者達が自らの手で断ち切り、勝手に終止符を打ってしまった
からなんだ」
「…………」
 続くはずの永遠を自らの手で、か……。

6.5-4:間に合ったヒロインと間に合わなかったヒロイン。

「……ふ〜ん、なるほどね。やっぱり、美由利もとうとう攻略されちゃったんだ?」
「まぁ、そういうコトになるけど……。というか、攻略ゆーな」
 翌日の夕暮れ時、部屋のベッドで横になっていた所で、唐突に電話をかけてきた絵里子から向けられた直球極まりない言い回しに、肯定しつつも苦笑い混じりのツッコミを入れるわたし。
 ……というか、どうしてわたしの周りはこうも身も蓋も無い連中ばかりなんだろう?
「別にいいじゃない。他にしっくりくる表現はあんの?」
「いや、それは……まぁ……」
 一応、最後は自分から動いたんだから、ようやく前へ踏み出したと言って欲しい気はするものの、でも確かに思い返してみればみるほど、わたしが
気付いたというよりも、柚奈の熱意が実を結んだと表現した方が自然に感じてしまう。
 ……本当はお互がひと目惚れ同士だったのに、ニブいというのはまったくもって罪である。
「ま、ぶっちゃけ去年の秋にあんた達を見た時点で、もう時間の問題とは思ってたけど、案外長引いちゃったわね?」
「……悪かったわね〜え、昔から優柔不断で」
「良くも悪くも、ヘンな所でおカタい所があるのよねぇ、美由利って。基本はズボラな癖に」
「ああ、もう……。久々に掛けてきたかと思えば、八つ当たりしたい事でもあったの?」
 いちいち言われなくても、全部分かってますってば。
 ……特に、柚奈を受け入れてからは、ますます自分の事が見えてくる様になった感じだし。
「だって、せっかく美由利に遅い春が来たというのに、元祖幼馴染みであるこのあたしへ真っ先に報告しないんだもん。一体どういう了見なのかなって」
「あんただって、彼氏ができた時に連絡なんてしてこなかったでしょ?……というより、一体どこから聞きつけてきたのよ?」
 同じ学校に通ってるならともかく、引越し前の遥か遠く離れた県外からそんな最新情報を。
「柚奈ちゃんからよ?みゆちゃんは私が幸せにしますから、安心して下さいって」
「ぐあ……っ」
 しかし、その疑問に対する回答はあまりに明確だった。
「ちゃんと挨拶回りしてるみたいで、よく出来たお嫁さんね?……あれ、美由利の方が嫁だっけ?」
「知らないわよ、そんな事……」
 ……というか、それは単に言いふらしてるだけと言いませんかね?
「ま、どちらにしても、これで肩の荷が下りた気分だわ。もう安心かしら?」
「あんたはわたしの親かっての。別に、今更ひとりで何も出来ないワケでもないし」
「ほう、言い切れる?」
「……言い切れないけど」
 ええ、すみませんね。
 ちょっと行動力を見せたからって、調子に乗っちゃって。
「よろしい。謙虚さってのは大切よ?」
「あんたに言われてもねぇ……とは思うけど、まぁいいわ。今まで心配かけたわね?」
「ん〜。そうやって素直にお礼を言われても、何だか気持ち悪いんだけど?」
「んじゃ、どーしろっていうのよ?ったく……」
 確かに、わたしが絵里子へ素直に礼を言った記憶なんてあまり無いけどさ。
「カラダの方は調教され尽くしても、心は変わらない美由利のままでいて、って所かしらん?」
「おだまり。エロオヤジ的な発想はやめなさいっての」
 ……ただ、そこまで退廃的な生活してないわよと、完全に言い切れないのもアレだけど。
「あはは。んじゃそろそろ切るわね、美由利?これからも幼馴染みとして愛してるわよん?」
「へいへい。わたしもよ、絵里子。受験が終わったらまた遊びましょ?何なら、今度は柚奈の家へ案内してあげてもいいし」
 きっと、わたしが初めて訪ねた時と同じく、お屋敷内を右往左往したり、色々圧倒されて挙動不審になったりするんだろうけど、それはちょっと見たかったりもして。
「なに?……もしかして、そういうプレイ希望?」
「だ〜か〜ら〜っ!何かヘンなモノでも取り憑いてるのか、あんたはっっ」
「いやいや、いちいち反応してくれて嬉しいわ。じゃね♪」
「…………」
「……まったく、お節介者め……」
 それから、通話が終わって静かになった携帯を耳から離した後で、小さく溜息を吐くわたし。
 今までも保護者気取りだったし、様子を見に来たあの後も、ずっと気にかけていたのかもしれない。
(まぁでも……。一応、感謝はしてるわよ、絵里子?)
 だからと言って、わたしにきちんとしたお礼が出来るかは分からないけど、まぁ律儀になり過ぎてもまた気持ち悪がられるだけかな?

 コンコン

「……美由利ちゃん、ご飯が出来てるわよ?降りてこないの?」
「ああ、はいはい。電話してたけど、今降りるから……っ」
 ともあれ、やがてすぐ後でドアをノックをする音と共にお母さんが声をかけてきたのを受けて、慌てて身を起こすわたし。
(……まぁ、わたしと絵里子の仲なんだから、他人行儀なのは似合わないわよね)
 精々、柚奈と二人で美味しいご飯をごちそうしてあげるくらい、かな?

                    *

「ほら、あまり長電話していると、ご飯が冷めちゃうわよ?」
「わたしだって、お腹ペコペコだったんだけどね。絵里子の奴、ひとの夕食時にいきなりかけてくるんだから……まったく」
 それから、慌しくキッチンへ降りた後で、お小言から入るお母さんに肩を竦めて見せると、用意された夕食が並ぶテーブルの前へ腰掛けるわたし。
 ちなみに、今夜の献立は目玉焼きが乗ったハンバーグと焼き魚、それにサラダとお味噌汁。
 ……どれも美味しそうだけど、考えたら来年の今頃は自分で用意しなきゃならないのよね。
(しかも、柚奈の奴は料理出来ないし……)
 受験が終わったら、二人で料理教室にでも通う必要があるかしらん?
「あら、そうだったの。呼びに行ったらベッドの方から声が聞こえたんで、もしかしてお取り込み中?って思っちゃったけど」
「もう……。お母さんまでそういうノリはいいってば……」
 すると、ご飯をよそったお茶碗をわたしに手渡してくれた後で向かいの席に座りながら、これまた絵里子ばりのお下品な冗談を向けてくる母上に、今度は呆れたツッコミを入れさせられてしまう。
「うふふ。それで、絵里子ちゃんがなんて?」
「ん〜。絵里子というより、どうやら柚奈の奴が挨拶周りみたいなコトをしてるみたいで、わたしにもとうとう春がやって来たのか、って」
「あらあら、それで祝福の電話をわざわざ掛けてきてくれたのね、絵里子ちゃん」
「まぁ春といっても、季節的にはもう夏なんだけど……」
 ……というか、いつの間に携帯番号の交換なんてしていたのだろうか。
 別に今更柚奈との仲を言い逃れする気はないものの、あの二人の間で自由に情報が共有されるのって、わたしにとってはちょっと困りものなんだけど。
「ふふ、一度ツバを付けた後での所有アピールは、基本中の基本だしね。……ただ逆に、意地の悪いお邪魔虫を呼んでしまう事もあるけど」
「基本、ねぇ……」
 さすがはお母様、完全肯定ですか。
「なるほど、柚奈ちゃんの方は着々と外堀も固めているみたいね。何だか昔を思い出すわ」
「……まったく、大人しそうなお嬢様に見えて、妙なトコロで行動的なんだから」
 そんなお母さんの言葉に、わたしは焼き魚をほじくりながら苦笑いを見せる。
 もしかしたら、この母上も似たような事を昔やっていたのだろうか。
「ふふ、そこはやっぱり似てるわね……」
「似てるって、小百合さんと?」
「ええ。気弱で大人しそうな顔して、あれで結構策士だったし」
「……あ、それ分かるかも。いつも穏やかな笑みを見せてるんだけど、狙った獲物は決して逃さないみたいな側面もありそうっていうか……」
 それが名家である桜庭家の流儀というか、帝王学みたいなものなのかもしれないけど。
「あら……。さゆちゃんのコト、良く知ってるみたいね?」
 すると、わたしが独り言の様に呟いた後で、一瞬だけ箸を止めて食いついてくるお母さん。
「……というか、近頃はわたしが柚奈のお家にお邪魔する日が増えたんで、自然と小百合さんとも顔を合わせる機会が多くなった感じかな?」
 基本的には随分と多忙な人だけど、週末にお泊りに行った時とか、滞在してるうちに一度は顔を合わせる機会を作ってくれてるみたいだし。
 ……まぁ、わたしとしても、柚奈がうちに来た時は必ずお母さんに顔を見せてる様に、やっぱり先方でお世話になる以上は、家主の小百合さんに挨拶
くらいはしておきたいわけで。
「そう……。どうやら、さゆちゃんによっぽど気に入られたみたいね」
「……う〜ん、そうなのかなぁ……」
 でも、小百合さんがわたしと顔を合わせたがるのは、別の理由がある気はするんだよね。
 ……だって、顔を合わせた時に決まって出されるのは、お母さん……いや、美咲春奈さんの話だし。
「ええ。さゆちゃんは人見知りの激しいお嬢様として有名で、誰かに懐くなんて滅多になかったから」
 そして、「その代わり、一度心を許した相手にはとことん尽くそうとするけれど」と付け加えてくるお母さん。
「……まぁ、そこはぶっちゃけお母さんのお蔭が大きいかな?一応、わたし自身にも興味があるとは言ってたけど」
「…………」
 しかし、そんなわたしの台詞を無言で受け止めるお母さんの表情は、どこか影を落としてる様にも見えたりして。
「どうしたの……?」
「……いいえ。それで、あなたと柚奈ちゃんについては何か言ってた?」
「まぁ、柚奈をよろしくみたいな事は言われたけど……。あ、あとそういえば、わたしの力が及ばない所からの邪魔者は一切近づかせないから安心して、みたいな事も言われた様な……」
 あれは一体、どういう意味なんだろう。
 まぁ、守ってくれるって言葉自体はやぶさかじゃないとしても。
「……そう。さゆちゃんがそんなコトを……」
 すると、またも……というか、さっきよりも更に憂いを帯びた様な雰囲気で、わたしからの言葉を受け止めるお母さん。
(うーん……)
 明らかに最近増えたわよね、お母さんのこういう表情。
 別に、今までだっていつも笑ってたわけでもないけど、少なくとも常に毅然とした雰囲気を纏っている、強気で凛々しいタイプの女性だったのに、今の
お母さんからはまるで覇気を感じないというか。
「……ね、そういえば最近元気が無いみたいだけど、どうしたの?」
 そこで、いい機会かもしれないと、今度はこちらからお母さんへ切り出してみるわたし。
 今までは気にしない様にしてきたけど、やっぱりいつまでも放っておくのは良くないだろうから。
「え……。私が?」
「うん。何となくだけど、そうやって微妙な顔をしてる事が増えたなと思って」
 しかも、丁度わたしと柚奈の関係に決着が付いた辺りからというのが、特に気になっていた所だった。
 その前までは、進むべき道を忘れて迷走するわたしを情けない娘だと叱りつけてたというのに。
「そうかしら?別にそんな事は無いと思うけど……」
 すると、母上は追及するわたしに対して、最初は否定してくるものの……。
「……ただ、あなた達がちょっと羨ましいとは思ってるかな……?」
 やっぱり、毎日顔を合わせている娘相手に誤魔化しきれないと思ったのか、視線を逸らせながらぽつりと呟くお母さん。
「羨ましい?」
「……だって、お母さんは美由利ちゃんと違って間に合わなかったから」
「…………」
(間に合わなかった、か……)
 経緯は全然分からないものの、やっぱりお母さんと小百合さんはお互いが望まない形で引き裂かれてしまったという事なんだろうか。
 ……ただまぁ、そうでなければ、わたしも柚奈も生まれてなかったんだろうけど。
「しかも、その先に続いてた未来があなた達ってのも、何だかちょっと複雑な気分かなって……」
「あはは……。それはまぁ……」
 言いたいことは分かります、母上。
 あまり、わたし達を目の前に本音を出せないっていうのも含めて。
「…………」
「……そういえば、お母さんはもう小百合さんに会う気は無いの?」
「さゆちゃんに……?」
 それから、一旦会話が途切れてしまった後で、小百合さんから時々聞かれている質問を遠慮がちに切り出してみるわたし。
 ……正直、あまり積極的に出したい話題じゃないけど、この流れの中ではどうしてもその話に行き着いてしまうというか。
「ほら、前は楽しそうに小百合さんとの思い出を語ってたじゃない?」
「それは、そうなんだけど……」
 なのに、いざ会おうと思えば会える場所にいる事が分かった後は、お母さんはすっかりと自分から小百合さんの事を話さなくなってしまった。
「しかも、確かわたしの名前だって……」
「……その話はもういいから。美由利ちゃんは美由利ちゃんで、柚奈ちゃんは柚奈ちゃん。それ以外の何者でもないわ」
 そして、初めて桜庭家へお邪魔する直前に聞いた、わたしと柚奈の名前の由来の話を持ち出そうとした所で、お母さんはこちらへ手を伸ばして制止してしまう。
「う、うん……」
「…………」
「…………」
 それから、しばらくお互いに黙々と食事を続けながら、気まずい空気が流れてしまうものの……。
「ただ、一つだけはっきりさせておくと、私は別にさゆちゃんを恨んだりとかしているから避けてるわけじゃない。……むしろ、恨まれて当然なのは私の方
だから、今更会わせる顔が無いだけ」
「……そう思ってるのは、お母さんだけじゃないの?」
 少なくとも小百合さんの方は、あんなにも会いたがっているのだから。
「あれから、お互いの子供がこんなに大きくなったぐらいの時間が過ぎたし、もしかしたらそうなのかもしれないけど……」
「もう、お母さんらしくないなぁ……。あの赤薔薇の君はどこへ行っちゃったの?」
 そこで、歯切れが悪すぎて何だかイラっとした気分になってきたわたしは、無神経に皮肉めいた言葉を向けるものの……。
「……散ってしまったわ。狂い咲くだけ狂い咲いてね」
 今でもうちの学園に伝説として残っている、かつてのカリスマ生徒から返されたのは、自虐に満ちた哀しい笑みだった。
「…………」
 そう言われてしまえば、わたしもそれ以上は何も言えないんだけど……。
「……それにしても、美由利ちゃんも随分とお節介になったものね。さゆちゃんに頼まれたの?」
「別にそんなんじゃないけど、少なくとも物事をすっきりさせないままなのは良くないってわたしに教育したのは、お母さんでしょ?」
 一応、わたしにだって反抗期はあったけど、それでも強気で厳しくて気高いお母さんはずっと尊敬してきたわけで。
「…………」
「……そうね。ずっと逃げ続けるわけにもいかない、か……」
「うんうん。その調子、その調子」
「確かに、無意味に落ち込むくらいなら、美由利ちゃんでも弄り倒して昔の自分を取り戻そうとする方が前向きかしらね?」
「そうそう……って、こらこらこらぁ……っ!」
 ……あと、ついでにお節介で柚奈みたいなヘンタイさんの気がある所も含めて、ね。

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