anonゲームレビュー

 

 

実はタイトルの意味が最近まで疑問だったんですけど、
どうやら「追複曲(同一の旋律を繰り返して次々に前のものを追いかける様にして進む音楽形式)」の事らしいですね。
Kanon(追複曲)@「想い出に還る物語」という事でこのセンスは素晴らしいです。
密かに辞書で調べるまで「実は響きが良いので適当に付けたとか」とか思っていただけに尚更(コラコラコラ^^;)。

ちなみに「Kanon」はドイツ語で英語では「Canon」と表記されるんですがやっぱ断然前者の方が良いですね。
何か「Cannon(キャノン砲)」と勘違いしてせっかくのイメージ壊してしまいそうだし(笑)。
そう言えば余談ですけど、こういった単語がゲームタイトルとかに使われる場合英語よりドイツ語の方がしっくりくる事も多いですね。
アリスソフトの「AmbivalenZ」もドイツ語で、英語だと「Ambivalence」となりますけど、前者の方が最初と最後にそれぞれの対極のスペルが来ている事から「二律背反」という意味合いをより端的に示していますね。というかそっちの方が断然響きが良いです。閑話休題。

で、この「Kanon」ですが、個人的には発売前から確信めいた期待をしていました。「絶対外す事は無い」って。
こういう確信を持って期待したのはこの種のジャンルだと「To−Heart」と「くすり指2」位ですかね。
もっともこれは当然ボク個人だけでは無くて、あの98年最高傑作の一つとまで言われた「ONE 輝く季節へ」のスタッフの次回作(会社は変わっちゃったけど)と言うことで実際ユーザーからは過剰なまでの期待(特にシナリオと音楽面で)を寄せられていたんですね。期待しているユーザー達から「絶対買う」という確約を得る代わりにほぼ完璧なクオリティを求められていたと思います。

 

そして、今回その期待に見事に答えたのがこの「Kanon」なんですね。

 

もうオープニングからしていきなり感動ものでした(^^)。
主人公が7年前まで暮らしていた雪の街に戻ってきて、そこで幼なじみの少女と再会するっていうお話そのものはもはや珍しくもないって感じですけど、話の展開のさせ方があまりに上手くて開始5分でいきなりゲームに引き込まれてました。良くある「びっくり」とか「感動でその場で抱きつき」のパターンじゃ無くて、あのあくまで自然でそれでいて暖かい再開シーンの運びは流石の一言。これは名雪の性格設定の賜物なんでしょうけど。

で全体のシナリオなんですけど、泣きました、ええ。ゲームのシナリオで泣けたのは本当に久しぶりです。もう真琴シナリオの終盤なんて涙で目が霞んで視界がぼやけてましたし。前半〜中盤で「日常の幸せ」を表現しておいて、後半から一度プレーヤーを奈落に突き落とす事でかなりシナリオのトーンのギャップがあるだけに余計終盤の展開が堪えるんですね。ここら辺はONEと同じ手法なんでしょうけど.....
.全員分のシナリオで「死」と「奇跡」を扱っているだけにかなり精神的負担は大きいです(汗)。ゆーかこの後奇跡が起きてハッピーエンドになるって分かっていても涙が止まらないって感じで。

それとやっぱり泣けた要因として音楽の出来が大きいですね。とにかくシナリオとの融合が凄すぎです。「雪」がテーマなのか美しくも儚いって感じの曲が多く、一曲一曲のクオリティもさることながら場面を演出するBGMとしての出来は殆ど究極に近いと思います。今回から加わったオープニングとエンディングテーマも18禁PCゲームという限定されたエリア内で出回るにはあまりにも惜しいと思える位の出来ですし。

ちなみに登場キャラクターはほぼ例外なく性格がどこかぶっ飛んでます(笑)。それもほぼ全員が過去に言葉ではとても言い表せない様な悲しい過去を持っていながら、それが原因でそういう性格が形成されたとか言うんじゃなくて全員天然だし(汗)。おかげで主人公も他のゲームの主人公と比べたら相当ぶっ飛んでる部類に入るんですけど(堂々と真琴と一緒に風呂に入ろうとするところとか)終始突っ込み役になってるって感じです(ボケてる時も多いんだけど圧倒的に突っ込んでいる方が多いんですね、これが)。ゆーかきちんとCGがあるキャラで唯一まともなのは一番出番のない北川だけです。おかげでシナリオが核心に進むゲーム後半までは漫才の様な会話の連続で笑いまくれました。
ただ個人的にはこういうノリは大好きですけどここら辺は少しユーザーを選ぶかもしれないですね。その分現実味....というかゲームによってはそれがウリになっている「等身大の女の子」という言葉からはほぼ対極に位置したキャラ作りがなされていますから。まあでもこのゲームって普通の恋愛系ゲームとは明らかに違う方向性を持っていると思うので中途半端な(中途半端でなくても)リアリティなんて無用の長物ではあるんですが。

........しかしやっぱ一番変わっているのは秋子さんなんでしょうねぇ(^^;)。個人的には名雪の寝ぼけネタが萌え萌えですが(笑)。けろぴーとか。

kanon03.jpg (59085 バイト)

↑これ(笑)。

ちなみに18禁系ゲームお約束のHシーンはただのおまけに過ぎないですけど別に気にならなかったです(笑)。というか無理矢理でも18禁にしないと売れないっていう理由もあったろうし。執拗な程に気合い入れて作られているキスシーンに対して、Hシーンはかなりおざなりでこじつけっぽく挿入されている所から何となく開発者の「しゃーないだろ。やんなきゃならないんだから」っていう思念を感じますね(^^;)。しかもどうやらHシーンを削除した一般向け版も発売されるみたいだしここら辺は最早議論の余地はないでしょう。
というかさっき少し先述しましたけど、個人的にはこのゲームって元々普通の18禁系の恋愛ADVみたいな「男女の関係」の「愛」の方とは異なるベクトルのテーマ性を持っている気がします。寧ろこのゲームのテーマって「絆」じゃないのかと思いますけどね。各キャラの最後に起きる奇跡の起因になっているのも「愛し合う男女の愛」じゃ無くてそれらを超えた「絆」の力じゃないかなぁ.....と。

後ONEのネックだったCGも飛躍的に綺麗になってますね。まだまだ他作品と比べて手放しに綺麗という訳でも無いのかもしれませんけど、CG見て引いてしまいがちな(^^;)ONEよりははるかに良くなってます。特に終盤やエンディングイベントまわりのCGはかなり気合い掛けて作られてますし。

 

.....という事であの期待過剰のプレッシャーの中、CG、シナリオ、音楽共に極めて高いクオリティのゲームを作り上げたKeyのスタッフにはただ脱帽としか言いようが無いですね。1999年に発売された恋愛ADV系ゲームとしては最高峰の作品だと思います。まだプレイしてない方は是非遊んでみて欲しい作品ですね(一般向けも出る事ですし)。

ちなみに初回特典で付いてくるアレンジサウンドトラックですが、これがまた洒落にならない程のクオリティです。タイトルの「anemoscope(風向計)」の名の通り、様々なアプローチで「風」が表現されていて一曲一曲非常に聞かせる曲ばかりです(ちなみに個人的にはオルゴール風の「少女の檻」が好きですね)。それとやはりオープニングとエンディングのフルコーラスが聴けるというのが大きいですね。特にエンディングテーマは必聴ものです。買えなかった人の為に是非単品でも出して欲しいところ。CDレーベルも数種類付いてきますし(^^;)。ちなみに制服あゆとメイドさん名雪バージョンが萌え♪♪(笑)。

追記:
どうやらanemoscope以外にもマキシシングルにもOPとEDのフルコーラスが収録されている様ですね。
しかもこっちはインストバージョン付きで。
詳しくはkeyのHPに委託情報等が掲載されています。

 

........ちなみに下からは不満点ですけど、ネタバレが少しあるので気を付けて下さい。

 

 


.......ただし、重箱の隅をつつけば意外とあるんですよね(^^;)。不満点やらシナリオの突っ込み点。

 

まずは、シナリオによっては後半の展開があまりに唐突すぎな事。特に名雪と舞シナリオ。

舞の場合、ゲーム終盤、しかも最後の敵を倒してさあハッピーエンドだ.....って所で思いも寄らない方向に話が急展開します。
........が、これがちと急激すぎて話に付いていくのに必死で感動したり涙を流す暇すらなかったりして(汗)。
事前にあまりにも複線が無さ過ぎなんですね。せめて主人公と舞が実は7年前から出会っていたっていう事位はちらつかせておいた方が良かったんじゃないかと思います。

んで名雪シナリオの方は逆にバレバレすぎて興ざめでした(^^;)。
ゆーか1/27のあの不幸イベントの発生はちとおざなりすぎです(汗)。しかもこっちは事前に主人公自身の名雪へのモノローグで次がどういう展開になるか予告していただけに余計わざとらしく感じます。何か名雪と主人公の立場を入れ替えるために無理矢理あの不幸イベントを起こしたとしか見えなくてちと呆気にとられてしまいました(汗)。お話自体は凄く感動的なんですけどなんだか白けてしまったというか。
多分後半にさしかかったあたりの名雪の占い(運勢が最悪という)がその複線だったんでしょうけど、あれだけだとちと不十分ですね。その後に告白イベントとHシーンが続くので覚えている人は殆どいないでしょうし(^^;)。
.....どっちかというと病気の方が良かったんじゃないかと思うんですけどね。前半辺りから少しずつ予兆しておけるし。
もしくはあの主人公のモノローグ(自分と名雪の立場が逆になっても.....って奴)は無かった方が良かったのかも。舞の時とは逆にここは絶対に先の展開が読めたらマズい場面です。
もう一つ言えばあの名雪シナリオの時のみ発生する突如の試験ってのもわざとらしすぎというか...(汗)


複線の張り方が非常に巧妙だったあゆや真琴と比べるとちと残念。個人的に一番外したかなと思えたのがこの名雪シナリオでした。

 

んでそのほかの突っ込み点ですが、割と矛盾があったりして.....

まずは主人公がこの街にどれくらいいたかがなかなかはっきりしなかった事。
生まれて7年前までずっと住んでいたのか、それとも長期休暇の時のみに来ていたのか、もしくは7年前の冬休みだけだったのか。栞意外は全員主人公と以前出会っていたって設定なんでここら変が曖昧なのはちと混乱を生みました。確かにプレイしていればはっきりしますけど最初にきっちり述べておいて欲しかったですね(もしくはマニュアルにでも)。

後主人公の初恋の相手が誰だったのか?とか(真琴とあゆのどっちだよ?)
あゆシナリオではあゆになってますけど、その場合真琴シナリオで出てきた「沢渡真琴」って女性に恋こがれていたっていう設定がおかしくなります。主人公があゆに出合ったのが7年前の冬休みで街を離れる直前なんで「沢渡真琴」とはその前に好きになっていたはず。「沢渡真琴」を好きになったのが街を離れてからって事になったら今度は真琴シナリオがおかしくなるんですね。これが。

 

又、

「名雪は一日の1/3は眠っているんじゃないか」とか(その前の日に名雪が11時間眠っている事を知っていて言っているので。適切なのは1/2かもしくは2/3ですね(猫並って事で^^;)。)、二日目にあゆがたい焼きを又食い逃げしてるのを知っていて、逃げ延びた後に「今日の獲物は何だ?」って聞いてたい焼きって知って呆れているところとか探せばあるんですけど、まぁここら辺は「まぁいいか」で終わる範囲だし問題は無いです。

ちなみにシステム面だとシナリオ履歴やロード時に確認メッセージが欲しかった所です。セーブとロードが結構間違いやすかったので。
というかシナリオ履歴については昔(Moon.やONEの頃)から言われている辺りから、もしかしてワザと入れていないとか?(んな馬鹿な)

 


 

とはいえ、やはりトータルでの完成度の高さは尋常でないレベルですし、この程度の突っ込みでこのゲームの評価が揺らぐものでは無いです。
一人一人のシナリオの練り込み具合が非常に高く、他の同系列ゲームのシナリオよりも明らかに1ランクは上を行っているという事を感じさせられました。
次回作が非常に楽しみですね。また自分を含め無条件で期待してしまうユーザーが沢山だと思いますけど頑張って欲しいです。

 

.....ん〜でも最後に秋子さんシナリオ欲しかったかも(^^)......
ので何となくSSにしてみました(笑)。こちらからどうぞ

 

あ、も一つ。

こら主人公、舞は佐祐理さんのものだぞ(爆)。

....って事でこの二人のラブラブなお話をSS(サイドストーリー)にしてみました(笑)。ここからどうぞ

 

 

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