グランディア
(シナリオ考)

 97年12月、セガサターン陣営の切り札RPGとして発売された大作RPGグランディア。このゲームの開発先はメガCD時代「ルナ」シリーズが大好評だったセガ系ハードの守護神とも呼ばれるゲームアーツ。今までに無いくらいの豪華なスタッフと4年という歳月をかけて制作されたこのゲーム、セガのBBSを初め各地から好評の声が上がってますが、僕はこのゲームにやるせない不満感を覚えました。音楽やゲームシステムに関してはかなり素晴らしい物を感じましたが(持ち物の制限はちょっと苦しかったけど)、シナリオ面においてかなり強い反発を覚えたのです。そこで、今回はシナリオ面において感じた不満点(主に2つ)を述べたいと思います。勿論これは僕個人の、1ユーザーとしての意見であり、これを見る人に賛同を求めるものではありません。もしここにある記述に御意見をお持ちになられましたら、是非感想を送って下さい。あ、あと思いっきりネタバレな記述ですので、まだクリアしていない方はゲーム終了後まで読まない方がいいと思います。


・冒険者から勇者様へ

 まず一つは、このゲームのストーリーのベクトルが前半と後半で変わってしまった事です。このゲームの前半は、辺境に住んでいる少年ジャスティンが、自分の中に溢れる勇気と冒険心で、仲間と共にまだ見ぬ世界の果てを目指して冒険するというストーリーです。このゲームのパンフレットにある「”冒険”という言葉がすでに輝きを失ってしまった、そんな時代ー」というフレーズにある通り、RPGの世界で久しく忘れられていた「未知への冒険」というストーリーに、僕は久しく失っていた大切な何かを取り戻した、そんな感動を覚えました。このゲームに関してはストーリーの先読みなんてバカバカしい事をする気はまったく起きず、ただここから先に何が待っているのかというわくわく感だけでプレイし、そこに起きるイベントを素直に受け止めてました。ストーリー後半、ガイアが登場する迄は_

 ストーリーはゲーム後半、ガイアという存在が登場してから、そのベクトルが変わっていきます。浮き彫りになるガーライル軍の陰謀、世界の危機、という風に、ストーリーが未知への探求から、ガーライル軍の魔の手から世界を救え!な方向に流れていきます。そして、少年冒険者ジャスティンも周りの流れに流され、少しずつ変わっていきます。
 そしてストーリーのベクトルの変化を決定付けたのは、ジールパドンの地下遺跡に入る時、番人であるギドから「なぜアレントへ行きたいのか」と問われ、ジャスティンは「最初はただ自分の冒険心にまかせてここまで来た。だけど今は違う。みんなを守りたいんだ。」冒険者ジャスティンが世界を救う勇者様に生まれ変わった瞬間です。あとは典型的な勇者街道まっしぐらでした。そして、僕のジャスティンへの感情移入はここで終わりました。
 どうせならあの時のギドの質問の答えは、「俺は父さんから受け継いだこの精霊石でアレントにたどり着いてみせる。そしてなぜ古代エンジュール文明が栄え、そして滅びたのか、そしてガイアとは何なのか、この俺の手ですべてを解き明かしてやるんだ!」でも良かったのでは?彼には最後まで純粋な冒険者であって欲しかったです。この後は完全に人間ドラマ中心なストーリーが展開していきます。勿論これはこれで盛り上がったし、悪くはないのですが、すでにゲーム前半部分の冒険物語としての面影は残ってませんでした。まずはこれが不満点の一つ。


・出番の無い仲間達。

 で、もう一つの不満点(こっちがメイン)ですが、このゲームは主人公の他に、入れ替わり立ち替わり合計7人が仲間になる訳ですが、フィーナを除く殆どの仲間に見せ場が与えられなかった事です。

 このゲームはあくまでジャスティンとフィーナが中心になって進んでおり、後の仲間はほとんどただの戦闘要因にしか過ぎない(ちょっと言い過ぎだけど)扱いを受けている様に思えました。
 特に僕の愛しの(をい^^)リエーテ様が酷い。ゲーム序盤からあれだけ引っ張っておいてあの扱いは酷すぎます。本来ならヒロインになったっておかしくはない程設定上では大きな存在の筈なのに、あれでは何の為にジャスティン達に同行したか分かりません。結果的には彼女の高い魔法能力でジャスティン達を助ける為位にしかなっていませんでした。

 かの名作「ルナ エターナルブルー」には仲間一人一人にきちんと見せ場が用意されていました。ゲーム後半はそれぞれの仲間が主役のイベントが連続して1つのストーリーを形成しており、この展開はお見事という他ありませんでした(FF7もそんな感じでしたよね)。しかし、グランディアにはそれがありません。あくまで主役はジャスティンとフィーナなんです。ゲーム終盤でガイアが復活してミューレンが暴走(か^^?)していた時、ストーリーは完全にこの3人で展開されていて、そこに居合わせた同じ仲間の筈のラップとリエーテ様は完全に無視されていました。一応彼らにセリフはありましたが、3人の会話に無理矢理口を挟んだって程度ですし、フィーナはこの二人に見向きすらしていません(ルーシアを見習え)。個人的にもこの2人(特にリエーテ様)には思い入れが強かったので、さすがにこれはムッときました。ミューレンに止め刺しとけば良かったかな何て阿呆な事考えたり(^^)。ちなみに他のキャラもそんな感じでしたね。結局スーの立場って何だったんでしょう?エンディングも仲間は ひとまとめな扱いでしたし、フィーナはいかにもジャスティン一人でやり遂げましたみたいな事言ってるし。何なんだかなぁ。

 さて、結論をまとめますと、せっかく魅力的なキャラなんですから、仲間一人一人にきちんと彼らが主役のイベントがゲーム本筋の中で1つ位は欲しかったです。素人ながらに「キャラを生かし切ってないなあ」と感じました。何か凄くもったいない気がします。


・補足:ルナ エターナルブルーにおけるストーリーの一貫性

 考えてみれば結局「ルナ エターナルブルー」も大筋はヒイロとルーシアの2人のお話で、こちらも冒険者ヒイロがストーリーが進むにつれ段々世界を救う勇者ヒイロになっていってます。でもヒイロを突き動かしていたのは別に世界の平和の為等ではなく、初めて出逢った時から変わらぬルーシアへの想いでした(少なくとも僕はそう思う)。ここら辺にこのゲームのストーリーの普遍的な一貫性を感じてます。何でグランディアで退化しちゃったんだろ?

 

 


  電脳幻想曲へ